高齢者への最適な治療を考える

The reality of Active Senior

20年間での脳梗塞患者の変化

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「アクティブシニア」と呼ばれる元気な高齢者が増加している今、65歳以上を“高齢者”とひとくくりに捉えて治療方針を決めてしまってよいものでしょうか。ここでは、脳梗塞患者に関するデータを紹介しながら、アクティブシニアの心房細動治療について考察します。

  • 脳梗塞患者135,266例の発症時年齢、入院時神経学的重症度(National Institutes of Health Stroke Scale score:NIHSSスコア)、退院時機能転帰(修正ランキン尺度スコア)の経年的変化
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出典:Toyoda K et al. JAMA Neurol. 2022; 79: 61-69.より一部抜粋 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

方法:
2000年から2019年までの20年間に日本脳卒中データバンクに登録された183,080 例の脳卒中患者のうち、発症後7日以内に登録された急性期の脳梗塞患者135,266例を対象とした。入院時神経学的重症度をNational Institutes of Health Stroke Scale score(NIHSSスコア)を用いて評価し、退院時機能転帰を修正ランキン尺度スコアを用いて評価した。

最近20年間の推移を見ると、脳梗塞の発症時年齢は上昇している。

入院時神経学的重症度(NIHSSスコア)は軽症化している。

退院時機能転帰(修正ランキン尺度スコア)は、転帰不良、死亡例の割合が減少している。多変量解析を行ったところ、転帰良好の患者が増えていることが分かった。

データを読み解く

脳梗塞の危険因子を予防することが健康寿命延伸のカギ。
アクティブな高齢の心房細動患者さんには、適切な抗凝固療法の継続を。

脳梗塞の発症時年齢が上昇している原因としては、生活習慣病予防や心房細動に対する抗凝固療法の普及が考えられます。高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動などは脳梗塞との関連が指摘されている代表的な疾患ですが、そうした疾患をきちんと治療している高齢者が少なくないため、脳梗塞の発症を未然に防ぐことにつながっているのだろうと推測されます。また、入院時の重症度が軽症化している点についても、予防の普及が影響しているかもしれません。たとえば、適切に抗凝固薬を服用していると脳梗塞を起こしても比較的軽症で済むなど、予防治療によって重症例が減少している側面があります。加えて、診断技術の進歩、たとえば頭部MRIの普及に伴う軽症脳梗塞患者の診断率向上なども、軽症化の要因の1つと考えてよいでしょう。

一方、脳梗塞患者の退院時機能転帰に軽症化がみられることについては、急性期再灌流療法の登場など、この20年間の治療の進歩が影響している可能性が考えられます。

このように、脳梗塞発症を未然に防ぐことができている、あるいは脳梗塞を経験したあとでもアクティブな生活を送ることができている高齢者が増えています。高齢の心房細動患者さんに関して言えば、元気なうちに適切な抗凝固療法を継続し、アクティブな生活を維持することが健康寿命を維持するために重要と言えます。

豊田 一則 先生

国立循環器病研究センター病院
副院長/脳血管部門長
豊田 一則 先生

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2012年より日本で販売している選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤イグザレルト®は、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の発症抑制、深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)患者の治療・再発抑制の成人適応に加え、DOACでは初めて、小児に対する静脈血栓塞栓症(VTE)の治療・再発抑制、および、下肢血行再建術施行後の成人末梢動脈疾患(PAD)患者に対する血栓・塞栓形成の抑制について、それぞれ承認を取得しました。また、イグザレルト®は、患者さんのニーズや用途に合わせて選択いただける錠剤、細粒分包、OD(口腔内崩壊)錠、ドライシロップ小児用の4剤形を提供しています。