高齢者への最適な治療を考える

The reality of Active Senior

Multimorbidityにおける老年医学的管理

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「アクティブシニア」と呼ばれる元気な高齢者が増加している今、65歳以上を“高齢者”とひとくくりに捉えて治療方針を決めてしまってよいものでしょうか。ここでは、multimorbidityにおける老年医学的管理を踏まえながら、アクティブシニアの心房細動治療について考察します。

  • Multimorbidity(多疾患併存)における老年医学的管理で重要な観点
Multimorbidity(多疾患併存)における老年医学的管理で重要な観点

参照:Kojima T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(12): 1105-1111.
監修:東京大学大学院医学系研究科老年病学 秋下雅弘 先生

ひとくちに“高齢者”といっても、すべての人がフレイルになるわけではなく、積極的な治療が可能なアクティブシニアも少なくない。

アクティブシニアであっても、脳梗塞を発症するとフレイルや要介護に陥るリスクがある。アクティブシニアの心房細動治療では、個々の状態を慎重に見極めたうえで、抗凝固療法を継続することを考慮する。

データを読み解く

高齢者の医療はひとくくりにしない。アクティブシニアとフレイルに対する治療の考え方。

同じ高齢者でも、アクティブシニアとフレイルとでは管理の方法が異なります。アクティブシニアの場合、高血圧、心房細動、糖尿病、 脂質異常症などの併存疾患を有している人も少なくないので、心血管イベントを抑制するための治療の継続と、生活習慣の改善が重要 になります。多剤服用になってしまうことも考えられますが、アクティブシニアであればある程度は許容されるでしょう。アクティブシニアは仕事をしていたり、趣味にも積極的だったりするので、社会性を保てるような治療方針を念頭に置くことも大切です。

一方、フレイルでは、併存疾患を積極的に治療するよりも、むしろ老年症候群の進行を防ぐことやQOLを維持することに主眼を置いた治療が求められるでしょう。フレイルの場合は、多剤服用が副作用の発現や転倒の発生につながることがあるので、治療の優先度を考慮した服薬管理も重要となります。日常診療では、患者さんの動き、話しているときの顔つきなどを観察し、フレイルを見逃さないようにすることが大切です。

心房細動に関して言えば、高齢の心房細動患者に対する抗凝固療法をどのように行うかが議論になりますが、75歳以上の日本人非弁膜症性心房細動患者2,951例を登録したANAFIE Registryのサブグループ解析1)では、約95%の患者さんに抗凝固薬が投与されていることが報告されました。高齢であっても、優先度の高い抗凝固療法を継続している医師は少なくないことがうかがわれます。高齢者だからと消極的になるのではなく、個々の病態を見極めながら対応を考えることが重要だと考えています。

1)Akishita M, et al. Arch Gerontol Geriatr. 2022 Jul-Aug; 101: 104661.

秋下 雅弘 先生

東京大学大学院医学系研究科
老年病学 教授
秋下 雅弘 先生

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2012年より日本で販売している選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤イグザレルト®は、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の発症抑制、深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)患者の治療・再発抑制の成人適応に加え、DOACでは初めて、小児に対する静脈血栓塞栓症(VTE)の治療・再発抑制、および、下肢血行再建術施行後の成人末梢動脈疾患(PAD)患者に対する血栓・塞栓形成の抑制について、それぞれ承認を取得しました。また、イグザレルト®は、患者さんのニーズや用途に合わせて選択いただける錠剤、細粒分包、OD(口腔内崩壊)錠、ドライシロップ小児用の4剤形を提供しています。