高齢者への最適な治療を考える

The reality of Active Senior

高齢者と医療者・介護者との意識の違い

イメージ

「アクティブシニア」と呼ばれる元気な高齢者が増加している今、65歳以上を“高齢者”とひとくくりに捉えて治療方針を決めてしまってよいものでしょうか。ここでは、治療を受ける高齢者と、医療者および介護者との意識の違いに関するデータを紹介しながら、アクティブシニアの心房細動治療について考察します。

  • 「高齢者に対する適切な医療提供に関する研究」
    (厚生労働科学研究費補助金 長寿科学総合研究事業 主任研究者:秋下雅弘)

高齢者医療における優先順位ー治療を受ける高齢者と、医療者および介護者との意識の違いー

「高齢者に対する適切な医療提供に関する研究」の図

* 65歳以上の住民で、要介護認定なし

秋下雅弘 他. 厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 高齢者に対する適切な医療提供に関する研究.
分担研究報告書「 高齢者医療の優先順位に関する意識調査・続報」(平成23年度).
(厚生労働科学研究成果データベース https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/113011/201115020A/201115020A0002.pdf 2023年1月6日閲覧)より改変

方法:
医療の受療側と提供側双方のニーズを把握するために、医療サービスの優先順位に関するアンケート調査を実施した。受療側4集団(地域高齢者、通院患者、デイケア利用者、認知症患者の家族)と、提供側4集団(老年病専門医、5学会の専門医、介護老人保健施設の担当医、介護従事者)を対象に、医療サービスの達成目標12項目に優先順位をつけてもらい、解析を行った。

「死亡率の低下」はすべての群において、高齢者医療における優先順位として最も低かった。

高齢者は「病気の効果的治療」を最も望んでおり、さらに「家族の負担軽減」「身体機能の回復」「活動能力の維持」を上位に挙げていることから、生活に支障がない状態で活動することに対して期待を抱いていることがうかがわれた。

データを読み解く

高齢者の診療において推奨されるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を用いて、患者さん個々の病態、生活背景、意向を確認したうえで治療方針を決定する。

本研究では、「死亡率の低下」の優先順位が、高齢者と医療提供側の双方で最も低いという結果になりました。もちろん、死亡率を下げることはとても重要です。しかし、この調査からは「それよりも病気をなんとかしたい、少しでも健康で生活に支障がない状態で過ごしたい」という思いが強いことが垣間見えます。医療者は、高齢者を目の前にしたときに治療の限界を感じることがありますが、それでも患者さんは状態をよくしてほしいと願っている、という点は着目すべきだと思います。

高齢の心房細動患者について考えてみても、この調査結果は参考になります。患者さんは心房細動の治療をできる限り行ってほしいと願っているでしょうし、脳梗塞を発症して日常生活に支障をきたすようなことは望んではいないはずです。アクティブシニアの心房細動患者に対しては、現在の状態を維持する治療を選択することが大切だと言えるでしょう。

そこで重要となるのが、ACPの実践です。日本老年医学会による「ACP推進に関する提言」1)では、ACPを「将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセスである」と定義しています。患者さんにとって最良の治療選択につながる情報はすべて提供し、話し合い、患者さんの意向を確認したうえで医療・ケアを提供していく必要があります。

1)一般社団法人 日本老年医学会 倫理委員会「エンドオブライフに関する小委員会」. 日本老年医学会「ACP推進に関する提言」(2019年).

秋下 雅弘 先生

東京大学大学院医学系研究科
老年病学 教授
秋下 雅弘 先生

ロゴ

2012年より日本で販売している選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤イグザレルト®は、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の発症抑制、深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PE)患者の治療・再発抑制の成人適応に加え、DOACでは初めて、小児に対する静脈血栓塞栓症(VTE)の治療・再発抑制、および、下肢血行再建術施行後の成人末梢動脈疾患(PAD)患者に対する血栓・塞栓形成の抑制について、それぞれ承認を取得しました。また、イグザレルト®は、患者さんのニーズや用途に合わせて選択いただける錠剤、細粒分包、OD(口腔内崩壊)錠、ドライシロップ小児用の4剤形を提供しています。