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腎機能が低下した心房細動患者に対する抗凝固療法

NVAF|SPAF座談会

〜欧米と日本の実臨床データから〜

 

司会:安田 聡 氏

国立循環器病研究センター 副院長 心臓血管内科 部門長

 

司会:安田 聡 氏

国立循環器病研究センター 副院長 心臓血管内科 部門長

 

Christian T. Ruff 氏

Associate Physician in the Cardiovascular Division, Brigham and
Women's Hospital, Boston, MA (USA)

 

安斉 俊久 氏

北海道大学大学院 循環病態内科学教室 教授

 

桑原 宏一郎 氏

信州大学医学部 循環器内科学 教授

 

清水 渉 氏

日本医科大学大学院 循環器内科学分野 大学院教授

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慢性腎臓病(CKD)や心不全(HF)、冠動脈疾患などを併存する心房細動(AF)患者は、出血と血栓塞栓症の両方のリスクが高く、抗凝固療法を開始または継続するに当たって適切な判断が必要である。近年、腎機能が低下したAF患者に対する非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の実臨床データが幾つか報告され、日常診療の参考となる可能性がある。本座談会では、国内外のエキスパートの先生方にお集まりいただき、腎機能が低下したAF患者に対する抗凝固療法の在り方について討議していただいた。

腎機能が低下したAF患者では出血・血栓塞栓症のいずれも高リスク

 

安田:

NOACはAF患者の脳梗塞予防に広く使われています。しかし、多くの臨床試験でクレアチニンクリアランス(CLcr)30mL/分未満の症例が除外されたため、腎機能低下例のエビデンスは少ない状況でした。日本では高齢化により、腎機能が低下したAF患者を診る機会が増えており、これらの症例に対する適切な抗凝固療法の在り方について考えることが求められています。

初めに、Ruff先生から腎機能低下とAFとの関連性、AF患者のイベント発現に腎機能低下が及ぼす影響について、これまでの知見をご紹介いただきます。

 

Ruff:

腎腎機能低下とAF発症は、互いに影響し合っていると考えられています。つまり、CKDはAF発症のリスク因子であり、反対にAFはCKDが末期腎不全に進展するリスク因子であることが報告されています1, 2)。腎機能低下は、AF患者のイベント発現にも影響すると考えられています。約13万人を対象としたデンマーク全国レジストリでは3)、AF患者がCKDを合併することで、脳卒中または全身性血栓塞栓症と出血リスクの両方が上昇したと報告されています。

 

安田:

腎機能低下の観点から、日本人AF患者の背景にはどのような特徴があるのでしょうか。

 

安斉:

総人口に占める65歳以上の割合が約28%と過去最高を記録し、日本は文字通りの超高齢社会となりました4)。AFの罹患率は加齢に伴い上昇するとされており、Fushimi AF Registryに登録されたAF患者の半数以上が75歳以上でした5)。さらに加齢に伴ってCLcrが低下し、75〜84歳の平均値は50.5mL/分と5)、高齢のAF患者では腎機能がかなり低下していました。

 

Ruff:

日本のAF患者は高齢で腎機能低下例が多いということですね。日本では、私が思っているよりも多くの方が低用量のNOACを服用しているのではないでしょうか。

 

安斉:

その通りです。日本ではAF患者のおよそ半数が減量用量を服用しています。さて、先ほどRuff先生が、AF患者にCKDが合併すると血栓塞栓症リスクと出血リスクが上昇するというデンマークのデータを示されましたが、日本でも同じようなデータがあります。J-RHYTHM Registryは、AF患者が対象の日本の代表的な登録観察研究ですが、腎機能の低下は血栓塞栓症、重大な出血、全死亡の複合エンドポイントを増加させました(図1)6)

AFにCKDが合併すると、生体内では何が起こっているのでしょうか。AF、CKDはいずれも心臓に持続的な容量負荷を与えます。それに伴いレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の賦活化や酸化ストレスの亢進などが生じることから、心筋リモデリングや炎症に伴い凝固能が亢進していると考えられます。つまりAFとCKDの合併で、HFや血栓塞栓症の発症リスクが高まることが想定されます。日本人AF患者にはこのような高リスク症例が多く見られるため、抗凝固療法では併存疾患を見据えた治療戦略が重要です。

 

桑原:

AFは、HFの発症リスク因子であり、増悪因子でもあります。逆に、HFはAFの発症リスク因子でもあります。HFはAF患者における血栓塞栓症の代表的なリスク因子です。またAFとHFは合併率が高いことが知られていますが、これは、高血圧、糖尿病、CKDなど、両疾患の発症リスク因子が共通していることが考えられます7)。このように、AF、HFの発症と、腎機能は密接に関連しているため、患者個々の状態を把握し、最適な治療を選択する必要があります。

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中等度の腎機能低下例においてもNOACは治療選択肢となりうる

 

安田:

次に、腎機能が低下したAF患者に対する抗凝固療法についてうかがいます。

 

Ruff:

以前、NOAC 4剤の第Ⅲ相臨床試験のメタ解析8)を実施しました。その結果、NOACはワルファリンよりも脳卒中および全身性塞栓症を減少させ、重大な出血は同程度でした。NOACの臨床試験では、CLcrが25〜30mL/分以下の重症例や末期腎不全患者は除外されましたが、腎機能別にサブグループ解析を行ったところ、CLcrが50mL/分以下の患者における成績と全体成績は一貫していました<sup>8)</sup>。これは、腎機能中等度低下例でNOACを選択することを支持する結果です。

 

安田:

日本では、腎機能が低下したAF患者に対するNOACのエビデンスにはどのようなものがあるのでしょうか。

 

桑原:

NOAC 4剤の第Ⅲ相臨床試験では、日本人の腎機能低下例の組み入れは少なく、全ての臨床試験を合わせてもCLcrが50mL/分以下の患者数は400例に満たない状況です。しかし、リバーロキサバンの非弁膜症性AF(NVAF)に対する特定使用成績調査XAPASSには、腎機能が低下した患者が2,000例以上含まれているため注目しています。

 

リバーロキサバンは腎機能低下例に対しても国内外のRCT・RWDで一貫した結果

 

安田:

では、日本の腎機能低下AF例におけるリバーロキサバンの臨床データについて解説をお願いします。

 

清水:

日本におけるリバーロキサバンの第Ⅲ相臨床試験J-ROCKET AFの組み入れ症例1,280例のうち284例がCLcr 30〜49mL/分の腎機能低下例でした9)。腎機能低下例には、リバーロキサバン1日10mgの減量用量が用いられましたが、リバーロキサバン群の重大な出血と頭蓋内出血はそれぞれ5.1%/年、1.3%/年、脳卒中/全身性塞栓症と虚血性脳卒中は2.8%/年、1.7%/年でした(図2)。

リバーロキサバンの特定使用成績調査XAPASSが現在進行中ですが、2017年9月時点の中間集計結果が報告されています<sup>10)</sup>。XAPASSでは、リバーロキサバンが投与されたNVAF患者1万例以上が登録され、そのうち2,168例の患者がCLcr 30〜49mL/分でした。この腎機能低下例における重大な出血の発症率は1.90%/年、脳卒中/全身性塞栓症は2.07%/年で、それらのうち、頭蓋内出血は0.73%/年、虚血性脳卒中は1.56%/年でした(表)。臨床試験では腎機能低下例のデータは少なかったのですが、XAPASSは2,000例を超える日本の腎機能低下例が含まれていますので、この結果は日常診療の参考として活用できると考えています。

 

安田:

海外の腎機能低下例でも、日本と同じような結果だったのでしょうか。

 

Ruff:

はい。1万4,264例のNVAF患者を対象としたリバーロキサバンの国際共同臨床試験ROCKET AFでは、約20%がCLcr 30〜49mL/分の腎機能低下患者であり、これらの患者に対してリバーロキサバンは1日20mgから15mgに減量投与されました。その結果、腎機能低下例においても有効性(脳卒中/全身性塞栓症)、安全性(重大な出血)ともに、全体集団と一貫した成績でした11)

また、実臨床におけるリバーロキサバンの前向き観察研究として、世界47カ国から1万1,121例のAF患者を登録した国際共同研究XANTUSプログラムが行われました。登録患者のうち約1,300例がCLcr 50mL/分以下の腎機能低下例であり、腎機能が低下するほど出血と血栓塞栓症のリスクが高まる傾向が見られました12)

 

安田:

無作為化比較試験(RCT)の結果は、質の高いエビデンスとして評価される一方で、限られた患者集団での成績であるため、結果が実臨床にそのまま当てはまるとはいえません。一方、登録観察研究などのリアルワールドデータ(RWD)は、幅広い患者層かつ使用実態下のデータが得られます。リバーロキサバンは、腎機能が低下した多くのAF患者のRWDが蓄積され、しばしば遭遇する高リスク患者に関する有益な情報をもたらすものと考えています。これらのデータが正しく解釈され、個々の患者に応じた最適な抗凝固療法が行われることに期待したいと思います。先生方、本日はありがとうございました。

 

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文献

1)Liao JN, et al. Kidney Int 2015; 87: 1209-1215.

2)Bansal N, et al. Circulation 2013; 127: 569-574.

3)Olesen JB, et al. N Engl J Med 2012; 367: 625-635.

4)総務省統計局. 統計トピックス No.103, 2017.

5)Yamashita Y, et al. Chest 2016; 149: 401-412.

6)Kodani E, et al. Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes 2018; 4: 59-68.

7)Maisel WH, et al. Am J Cardiol 2003; 91: 2D-8D.

8)Ruff CT, et al. Lancet 2014; 383: 955-962.

9)Hori M, et al. Circ J 2013; 77: 632-638.

10)イグザレルト特定使用成績調査の現状報告-2012年4月18日~2017年9月15日時点の調査票収集・データ固定症例での中間集計-.

11)Fox KA, et al. Eur Heart J 2011; 32: 2387-2394.

12)Kirchhof P, et al. J Am Coll Cardiol 2018; 72: 141-153.

COI:3)、6)、8)、9)、11)、12)はバイエルからの支援あり