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SPAF座談会

リアルワールドエビデンスの意義とリバーロキサバンのエビデンスからの知見(3)

 非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬 (NOAC)が登場して7年目を迎えた。NOAC が非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に広く使用されるようになり、脳梗塞急性期を含め、リアルワールドエビデンス(RWE)が着々と構築されつつある。本座談会では蓄積されつつあるリバーロキサバンのRWEを整理し、その意義について国内外の専門医5氏に討論していただいた。

司会 内山 真一郎 先生

◆ 海外のRWE・XANTUS:リアルワールドの幅広い患者層でもリバーロキサバンの有用性を再確認

内山 一般的に臨床試験は限られた患者集団を対象に、厳格なプロトコルで実施されます。これに対し、リアルワールドでは多様な患者集団をさまざまな条件・環境の下で治療を行います。そのため、臨床試験の結果が必ずしもリアルワールドに当てはまるとは限りません。したがって、臨床試験の成績をリアルワールドで検証し、RWEを構築していくことが不可欠です。
 NOACの普及に伴い、国内外でRWEが構築されつつありますので、まずAmarenco先生に海外のRWEについて解説していただきます。
Amarenco リバーロキサバンのリアルワールドにおける安全性と有効性を評価する、初めての国際前向き観察研究がXANTUSです1)
 対象はリバーロキサバンを新規に投与されたNVAF患者6,784例で、投与量は5,336例が欧米の標準用量である20mg/日、1,410例が15mg/日、35例がその他の用量でした。登録症例のCHADS2スコアについては、2点以上の症例を対象とした国際共同治験ROCKET AFでは平均値が3.5点であったのに対し2)、XANTUSでは0〜1点の患者も対象に含み、平均2.0点でした。
 イベント発生率は、重大な出血2.1%/年(頭蓋内出血0.4%/年、消化管出血0.9%/年)、脳卒中または全身性塞栓症0.8%/年、全死亡1.9%/年で(図1)、全体としてROCKET AFと一貫した結果でした。
平野 XANTUSのイベント発生率がROCKET AFより低いのは、CHADS2スコアが1点以下の症例が含まれていたからでしょうか。
内山 確かに低リスク症例が含まれており、それがイベント発生率に影響している可能性はあります。しかしXANTUSには、臨床試験では除外されている急性期の高リスク例が含まれていることも事実です。このように低リスクから高リスクまで幅広い患者が登録され、その上でイベント発生率が臨床試験よりも低いという結果が得られたことが重要です。
長尾 リバーロキサバンの投与では腎機能に応じた用量調節、すなわちクレアチニンクリアランス(CLcr)に基づいて用量を設定しますが、XANTUSにはその基準を用いずに不適切な用量が選択された症例が含まれているようです。こうした群では、どのようなイベントが生じたのでしょうか。
Amarenco 不適切な減量がなされた症例では主に虚血性脳卒中が、適切な減量がなされなかった症例では出血性脳卒中が多い傾向にありました。とても興味深い結果だと注目しています。

◆ その他の海外RWE:結果はROCKET AFと一貫

Amarenco リバーロキサバンでは健康保険のデータベースを用いた後ろ向き研究も行われています。脳卒中の既往がないNVAF患者を対象としたREVISIT-US3)などで、いずれの研究でもROCKET AFと一貫する結果が得られています。
野川 XANTUSは前向き観察研究、REVISIT-USは健康保険の処方箋データを用いた後ろ向き観察研究です。Amarenco先生は、これらRWEの結果にどのような意味を見いだされていますか。
Amarenco 前向き観察研究ではイベントを正確に評価することが重要であるため、XANTUSでは独立したイベント判定委員会が評価項目の判定を行い、データの質を担保しています。後ろ向き研究であるREVISIT-USでは、より多くの症例を対象とするだけでなく、評価項目を脳梗塞と頭蓋内出血に絞ることで、より客観的なデータが得られるように工夫されています。
 また、NVAF患者におけるリバーロキサバンの有効性と安全性を異なる研究モデルから検討することにより、答えを多角的に探ることは臨床的にも意味があります。いずれの検討においてもリバーロキサバンの有用性が確認されており、治療を選択するに当たって有用なデータだと考えています。

◆ 国内のRWE・XAPASS:高齢者など高リスク例でもJ-ROCKET AFと一貫した結果

内山 日本におけるリバーロキサバンのRWEとして、XAPASSが実施されました4)。対象はリバーロキサバンを新規に服用したNVAF患者で、2016年9月時点の中間集計での調査票収集・データ固定症例は10,001例でした。登録症例のCHADS2スコア平均値(2.2)とスコア分布は、日本の代表的なレジストリ研究であるFushimi AF Registry5)と近似しており、XAPASSはリアルワールドを反映した調査であると考えられます。
 出血イベントの発生率は、全ての出血4.50%/年、大出血1.06%/年、頭蓋内出血0.47%/年でした。血栓塞栓症イベントの発現率は、脳卒中・全身性塞栓症・心筋梗塞1.47%/年、虚血性脳卒中0.97%/年でした。
 さらに、これらのイベント発生率を高齢者(75歳以上)、腎機能低下例(CLcr 30〜49mL/分)、脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)・全身性塞栓症の既往例といった脳卒中リスクが高い患者集団別に検討しました。その結果、頭蓋内出血の発現率は高齢者0.60%/年、腎機能低下例 0.81%/年、脳梗塞・TIA・全身性塞栓症の既往例 0.87%/年で(表1)、虚血性脳卒中の発現率はそれぞれ1.42%/年、1.64%/年、2.01%/年でした。
 以上の結果は、日本で実施された臨床試験J-ROCKET AF6)とも一貫しており、高齢者など高リスク例の検討においても同様の結果でした。
Amarenco 日本でのリバーロキサバンの標準用量は欧米よりも少ない15mg/日ですね。
内山 日本のNVAF患者におけるリバーロキサバンの用法・用量は、CLcr 50mL/分以上の症例では15mg/日、15〜49mL/分では10mg/日です。
野川 日本では、低体重や腎機能が低下している患者が全体のおよそ半数を占めます。これらの症例のほとんどは高齢者と考えられます。このような患者では、出血への懸念から減量投与しがちですが、脳梗塞のリスクも高いため、不用意に低用量を選択すべきでないと考えます。
内山 その通りです。リバーロキサバンの場合、CLcrが50mL/分以上であれば、通常用量の15mg/日を投与すべきです。
野川 一方、XAPASSでは症例の約半数で初回投与用量が10mg/日と報告されています。その理由は、出血リスクが高いこと、腎障害や高齢が挙げられています(図2)。
長尾 XAPASSでは抗血小板薬との併用が15%の患者で行われており、これも減量に影響していると思います。この場合、出血性合併症を懸念して、腎機能が正常であってもNOACを減量する医師が多いという印象を持っています。

◆ RELAXED研究:脳梗塞急性期における抗凝固療法の至適開始時期を検討

内山 NVAF患者の脳梗塞急性期におけるリバーロキサバンのRWEも得られています。
平野 NVAF患者の脳梗塞急性期の抗凝固療法には、十分なエビデンスがありません。脳梗塞急性期は脳梗塞再発リスクが高いため、抗凝固療法の有益性は高いと考えられる半面、出血性脳卒中の懸念もあります。そのため、米国や日本のガイドラインでは脳梗塞発症後14日以内、欧州では1-3-6-12ルールで抗凝固療法を開始することが目安として記載されるにとどまっています。
 そこで、NVAFに伴う脳梗塞急性期におけるリバーロキサバンの至適投与開始時期を明らかにするため、2014年から2年間にわたり、医師主導型多施設共同前向き観察研究のRELAXED研究が実施されました7)表2)。中大脳動脈領域に梗塞を認めたNVAF患者で、発症後30日以内にリバーロキサバンによる抗凝固療法を開始した症例が登録されました。
 発症後48時間以内のMRI拡散強調画像で梗塞サイズを定量評価し、梗塞サイズとリバーロキサバン開始時期およびイベント発症との関連が解析されました。主要評価項目は脳梗塞の再発と大出血です。リバーロキサバンは梗塞サイズが小さい症例ほど早期に開始されており、これはSAMURAI-NVAF研究8)と類似した結果でした。
内山 リアルワールドの多くの観察研究から、リバーロキサバンの有効性と安全性を再確認するさまざまな知見が得られていることを、あらためて認識しました。本日はどうもありがとうございました。

    文献
  • 1)Camm AJ, et al. Eur Heart J 2016; 37: 1145-1153
  • 2)Patel MR, et al. N Engl J Med 2011; 365: 883-891
  • 3)Coleman CI, et al. Curr Med Res Opin 2016; 32: 2047-2053
  • 4)イグザレルト®錠特定使用成績調査の現状報告−2012年4月18日〜2016年9月15日時点の調査票収集・データ固定症例での中間集計
  • 5)Akao M, et al. J Cardiol 2013; 61: 260-266
  • 6)Hori M, et al. Circ J 2012; 76: 2104-2111
  • 7)Yasaka M, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis 2016; 25: 1342-1348
  • 8)Toyoda K, et al. Int J Stroke 2015; 10: 836-842
  • COI: 1〜7)はバイエルからの支援あり

ROCKET AF、XANTUSおよびREVISIT-USは、リバーロキサバンの海外承認用法・用量(20mg 1日1回、CLcr 50mL/分未満では15mg 1日1回)で実施されました。国内外の臨床試験成績を用いた薬物動態シミュレーションの結果、日本人に15mgおよび外国人に20mgのリバーロキサバンを投与した際の曝露量は同程度であることが確認されています。なお、国内承認用法・用量は15mg 1日1回(CLcr 50mL/分未満では10mg 1日1回)です。

L.JP.MKT.XA.07.2017.1533