疾患関連情報

SPAF座談会

腎機能が低下した心房細動患者に対する抗凝固療法

 近年のレジストリ研究によって、日本人心房細動(AF)患者の半数は75歳以上で、その多くは腎機能が低下していることが明らかとなった。こうした患者は脳梗塞や出血のリスクが高いため、適切な抗凝固療法を選択する必要がある。現在、腎機能低下を伴うAF患者に対し非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)を用いたデータが集積されつつある。そこでこれらのデータを踏まえ、腎機能が低下したAF患者の抗凝固療法について国内外のエキスパートに話し合っていただいた。

司会 赤尾 昌治 氏

腎機能低下を伴うAF患者はイベント発生リスクが高い

赤尾 AF患者の多くは高齢者で、かつ腎機能が低下している方が多いことはご承知かと思います。そこで本日は、腎機能が低下したAF患者に対する抗凝固療法について、臨床試験および実臨床データを踏まえ考えていきたいと思います。
 まず前向き登録観察研究Fushimi AF Registryのデータを紹介します。登録患者の平均年齢は74歳(2012年10月時点)1)で、高齢者を多く含む集団です。75歳以上の患者の58%がクレアチニンクリアランス(CLcr)50mL/分未満で2)、この結果からも高齢AF患者で腎機能低下例が多いといえます。またCLcr 50mL/分未満の患者は高齢であることに加え、女性、低体重例が多く、心不全、高血圧、動脈硬化、脳卒中などの併存疾患も多いことから、血栓塞栓症や出血のリスクが高いと考えられます。
 実際に、CLcrが低い患者ほど脳卒中/全身性塞栓症や重大な出血が多く見られ(図1)、多変量解析でも「CLcr 30mL/分未満」が脳卒中/全身性塞栓症および重大な出血の有意なリスク因子であることを確認しました2)
 さらに、心原性脳塞栓症の中でも大梗塞(体積30mL以上)のリスク因子について解析しました。その結果、「脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往」とともに「慢性腎臓病(CKD)」がリスク因子であることが明らかとなりました(表13)
Camm 腎機能の低下したAF患者が高リスクであることは、リバーロキサバンの第Ⅲ相臨床試験ROCKET AFの腎機能低下例サブ解析でも明らかにされています。それによると、腎機能低下例(CLcr 30~49mL/分)では91%がCHADS2スコア3点以上で、CLcr 50mL/分以上の患者よりも脳卒中/全身性塞栓症および重大な出血が多いことが確認されています4)
小谷 私たちはJ-RHYTHM Registryで、CLcrがAF患者の転帰に及ぼす影響を検討しました。本研究でも、複合イベント(血栓塞栓症+重大な出血+全死亡)のリスクは、CLcrが低い患者ほど高いことが示されました(図25)。多変量解析の結果でもCLcr 30mL/分未満は複合イベントの有意なリスク因子であり、特に全死亡の強力なリスク因子であることが示唆されました。

リバーロキサバンの臨床試験とリアルワールドデータは腎機能低下例でも一貫した結果

赤尾 次にCamm先生より、腎機能が低下したAF患者に対する抗凝固療法について、海外のエビデンスをご紹介いただきます。
Camm 中等度~高度の腎機能低下例に対するワルファリンの有効性については、脳卒中を減らすという報告6)と増やすという報告7)があり、見解は一致していません。一方、各NOACの第Ⅲ相臨床試験では、NOACの有効性に対して腎機能低下による影響はないとされています。ROCKET AF試験でも、腎機能低下例におけるワルファリンに対するリバーロキサバンの安全性・有効性は、全体の結果と一貫しています。
 さらにROCKET AF試験では試験期間中の腎機能悪化とアウトカムの関係も検討されています。リバーロキサバンは腎機能が経時的に悪化した症例において、ワルファリンに比べて、出血リスクの増加を伴うことなく、脳卒中/全身性塞栓症の発症を抑制しました8)
赤尾 日本人の腎機能低下例に対するNOACの安全性・有効性については、いかがでしょうか。
小谷 NOACの第Ⅲ相臨床試験に含まれる日本人腎機能低下例は少数です。しかしリバーロキサバンの特定使用成績調査XAPASSには、腎機能低下例が2,168例含まれています(2017年6月時点)。その中間集計では、重大な出血、頭蓋内出血、脳卒中/全身性塞栓症および脳梗塞の発症率は、それぞれ1.90%/年、0.73%/年、2.07%/年および1.56%/年と(表29)、国内第Ⅲ相臨床試験J-ROCKET AFに含まれる腎機能低下例と一貫した結果でした。
奥村 私たちは、東京都城北地区でNOACまたはワルファリンの治療を受けているAF患者を対象としたSAKURA AF Registryを行いました。同研究においても、腎機能低下例に対するNOACの有効性・安全性は、ワルファリンと同程度かそれ以上という印象があります。

抗凝固療法中は定期的な腎機能モニタリングを

赤尾 抗凝固薬、特にNOACを処方する際は、腎機能に応じて投与可否と投与量を決定する必要があるため、定期的な腎機能モニタリングが不可欠です。ここで鈴木先生に、腎機能が低下しやすい患者の特徴について考察していただきます。
鈴木 私たちは2004年から単施設コホートの心研データベースを継続していますので、このデータを基に腎機能が低下しやすい患者の特徴を検討してみます。
 心研データベースにはAF患者だけでなく、全ての循環器疾患患者が登録されていますが、推定糸球体濾過量(eGFR)は高齢者で低く、高齢者に腎機能低下患者が多いことは私たちのデータでも同じです。また、経年的にeGFRを低下させる因子を検討すると、年齢はもちろんのこと、心不全、虚血性心疾患、心筋症、貧血が関与していると考えられます。つまりこれらの因子を有すると、比較的短期間で腎機能が低下する可能性があるので、日常診療で意識すべきだと考えています。
赤尾 抗凝固療法中のAF患者では腎機能が低下するケースがしばしばあるため、注意が必要ですね。
Camm AF患者の腎機能低下にはさまざまな要因が関与しているとされ、私たちは中でも年齢とAF患者に併存する疾患の影響が大きいと考えています。日本人では年齢が強い関連因子で、虚血性心疾患の影響も大きいと思われます。このような関連因子から腎を守るという考え方が、これからのAF治療ではより重要になるでしょう。したがって、AF患者に抗凝固療法を行う際には定期的な腎機能モニタリングが必要と考えます。
奥村 SAKURA AF Registryでも、血栓塞栓症、出血、死亡リスクの上昇に腎機能低下(CLcr 50mL/分以下)が関与することを確認しています10)。今後、抗凝固療法中の腎機能の変化についても検討したいと思います。

リバーロキサバンは中等度腎機能低下例に対する選択肢の1つ

赤尾 では最後に、腎機能が低下したAF患者に対する抗凝固療法の在り方について、ご意見を伺いたいと思います。
Camm 抗凝固療法中の腎機能低下には、年齢以外にも、心不全や虚血性心疾患などの因子が関与しているとのコメントがありました。加えて抗凝固薬は一部が腎排泄されるため、抗凝固薬自体が腎機能の低下に関与している可能性があります。腎機能が低下したAF患者に抗凝固療法を行うに当たって、腎機能の変化についてもデータが必要になると考えています。
小谷 J-RHYTHM Registryでは、ワルファリンによる血栓塞栓症の発症抑制効果はCLcr 30~50mL/分の患者でも十分に得られていますので5)、NOACを含む抗凝固療法が有用である腎機能が低下したAF患者群は存在すると考えています。
鈴木 私も、CLcr 30~50mL/分の患者には基本的に抗凝固薬を処方すべきだと考えています。リバーロキサバンや他のNOACも1つの選択肢になると思います。
赤尾 Fushimi AF Registryでは、脳卒中/全身性塞栓症および大出血の発現リスクは、CLcr 30~50mL/分の群とCLcr 50mL/分以上の群で差はありませんでした3)。こうしたことからも、CLcr 30~50mL/分の患者に対しては、CLcr 50mL/分以上の患者と同様に、しっかりと抗凝固療法を行うことが重要だと考えます。
奥村 リバーロキサバンは、国内第Ⅲ相臨床試験において、日本独自の用量で有効性・安全性が検討されており、実臨床の腎機能低下例に対する使用実績も蓄積され、臨床試験結果と遜色ない中間集計結果が得られていますね。
赤尾 本日は、腎機能が低下したAF患者の抗凝固療法について、さまざまなご意見をいただきました。大変有意義なディスカッションをありがとうございました。

    文献
  • 1) Akao M, et al. Circ J 2014; 78: 2166-2172.
  • 2) Abe M, et al. Am J Cardiol 2017; 119: 1229-1237.
  • 3) Yasuda K, et al. Cerebrovasc Dis Extra 2018; 8: 50-59.
  • 4) Fox KA, et al. Eur Heart J 2011; 32: 2387-2394.
  • 5) Kodani E, et al. Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes 2018; 4: 59-68.
  • 6) Bonde AN, et al. J Am Coll Cardiol 2014; 64: 2471-2482.
  • 7) Kumar S, et al. BMJ 2018; 360: k342.
  • 8) Fordyce CB, et al. Circulation 2016; 134: 37-47.
  • 9) イグザレルト特定使用成績調査の現状報告-2012年4月18日~2017年9月15日時点の調査票収集・データ固定症例での中間集計.
  • 10) Okumura Y, et al. Circ J 2018; 82: 2500-2509.
  • COI:4),8),9)-10) はバイエルの支援あり
PP-XAR-JP-0182-29-10