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心房細動アブレーション施行予定の非弁膜症性心房細動患者に対する
    イグザレルトとビタミンK拮抗薬継続投与の比較

VENTURE AFは、イグザレルトの海外承認用法・用量(20mg 1日1回、CLcr50mL/min未満では15mg 1日1回)で実施されましたが、国内外の臨床試験成績を用いた薬物動態シミュレーションの結果、日本人に15mgおよび外国人に20mgのイグザレルトを投与した際の曝露量は同程度であることが確認されていることから記載しています。なお、国内承認用法・用量は15mg 1日1回(CLcr50mL/min未満では10mg 1日1回)です。

背景・目的

心房細動アブレーション(以下、アブレーション)周術期の抗凝固療法は、ビタミンK拮抗薬(VKA)中断後、ヘパリンブリッジによりアブレーションを施行する方法が行われてきたが、近年のガイドラインでは、VKAの継続投与下での施行も推奨されている。VENTURE AFは、非弁膜症性心房細動(NVAF)患者のアブレーション周術期の経口抗凝固薬継続投与について、イグザレルトとVKAの有用性を比較した初めての多施設共同無作為化前向き臨床試験である。

対象

アブレーション施行予定のNVAF患者(18歳以上)
弁膜症性心房細動患者、スクリーニング時にクレアチニンクリアランス(CLcr)50mL/min以下、6ヵ月以内の脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往、抗血小板薬併用が必要な症例等を除外した。

方法

イグザレルト群(20mgを1日1回、夕食後の服用を推奨)またはVKA群(目標プロトロンビン時間国際標準比[PT-INR]2.0~3.0)に無作為に割り付けた。両群とも医師の判断でアブレーション施行前の1~7日間(早期施行)、または少なくとも3週間(遅延施行)投与することとし、アブレーション周術期も継続した。アブレーション施行中は未分画ヘパリンを活性化凝固時間(ACT : activated clotting time)が300~400秒に維持されるように静脈内投与した。アブレーション施行後、イグザレルトは止血確認から6時間以上経過した後に投与を再開し、VKAは通常通り投与した。抗凝固薬は30±5日間投与し、その後の投与は患者ごとに医師が判断した。

  • 主要評価項目:アブレーション施行後30±5日における重大な出血事象
  • 副次評価項目:血栓塞栓性イベント(脳梗塞、全身性塞栓症、心筋梗塞、血管死およびこれらの複合)、その他の
                         出血性イベント、手技に起因する有害事象

結果

対象患者は、2013年2月~2014年9月にベルギー、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの5ヵ国の46施設から291例が登録され、そのうち248例が無作為化された。患者背景に両群間で有意な差はなかった(表1)。術中ヘパリン投与量は、VKA群と比較してイグザレルト群で26%多く(13,871±6,516単位 vs 10,964±5,912単位、p<0.001、両側検定、以下同じ)、ACTはイグザレルト群で9%短かった(302±49秒 vs 332±58秒、p<0.001)。


主要評価項目である重大な出血事象の発現率は両群とも低く、イグザレルト群では認められず、VKA群で重大な出血(ISTH出血基準)が1例認められたのみであった。血栓塞栓イベントの発現もイグザレルト群では認められず、VKA群で2例[脳梗塞1例(アブレーション施行27日後)および血管死1例(同14日後)]に認められた。すべてのイベントはイグザレルト群で26例、VKA群で25例において発現し、発現率は両群で同程度であった(表2)。

結論

NVAFに対するアブレーション周術期の抗凝固療法として、イグザレルト継続投与は適しており、イベント発現率はVKA継続投与と同程度であった。


*:本試験における「重大な出血事象」は、ISTH(International Society on Thrombosis and Haemostasis)出血基準における「大出血」、GUSTO(Global Use of Strategies to Open Occluded Coronary Arteries)出血基準における「重度の出血または生命を脅かす出血」、もしくはTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)出血基準における「大出血」のいずれかを満たすものと定義

欧州不整脈学会(EHRA)ポジションドキュメント2015では、
    心房細動アブレーション周術期の抗凝固療法として、
    VKAと非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)を同列に推奨

日本人非弁膜症性心房細動患者を対象とした
    心房細動アブレーション周術期のイグザレルト
    およびワルファリンの有用性の検討

背景・目的

心房細動アブレーション(以下、アブレーション)周術期の抗凝固療法として、イグザレルトの使用が増加しているが、日本人での有用性は未だ検討されていない。JACRE-Rは、日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者のアブレーション周術期におけるイグザレルトの有用性を検討した、初めての医師主導型多施設共同前向き登録観察研究である。

対象

アブレーション施行予定のNVAF患者で、術前に3週間以上イグザレルトまたはワルファリンが投与されている20歳以上の連続症例
アブレーション禁忌、イグザレルト/ワルファリン禁忌、2ヵ月以内に血栓塞栓症または心筋梗塞を発症した患者、他の臨床試験への参加者は除外した。

方法

イグザレルト投与患者はJACRE-R、ワルファリン投与患者はJACRE-Wに登録して別々に試験を実施し、両コホートを参照した。なお、アブレーション手技、経口抗凝固薬の中断、ヘパリンブリッジの施行は医師の裁量に任されている。

患者背景(n=1,118)

年齢(平均±SD、以下同じ)63.0±10.4歳、体重66.9±13.3kg、CHADS2スコア0.9±1.0、CHA2DS2-VAScスコア1.8±1.4、HAS-BLEDスコア0.9±0.8であった。

イベント発現率

患者背景(n=204)

年齢(平均±SD、以下同じ)67.7±9.9歳、体重64.5±12.8kg、CHADS2スコア1.3±1.1、CHA2DS2-VAScスコア2.4±1.5、HAS-BLEDスコア1.3±0.9であった。

イベント発現率

ヘパリンブリッジ有無別解析および
    アブレーション施行前後のイグザレルト投与状況

ヘパリンブリッジの有無別のイベント発現率(JACRE-R)

ヘパリンブリッジあり群(546例)は、なし群(572例)に比べ、非重大な出血が有意に増加した(4.03% vs 0.87%、p=0.001)。

アブレーション施行前後のイグザレルト投与状況(JACRE-R)

術前後のイグザレルトの投与は、前日、翌日ともに8割以上の患者で朝に行われていた。約4割の患者で術当日にも投与されていたが、そのほとんどは術後の投与であった。

心房細動アブレーション周術期における抗凝固療法のリアルワールド(実臨床)データ


済生会熊本病院 心臓血管センター 循環器内科
奥村 謙 先生

   心房細動アブレーション周術期における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の有用性については、これまで観察研究によるものが多く、前向きかつ無作為化での検討はほとんどなかった。そのような中、NOACでは初めての前向き無作為化試験VENTURE AFが海外で実施され、アブレーション周術期のイグザレルト継続投与はワルファリン継続投与と同様に有用であることが示された。さらに、日本の日常診療下でのイグザレルトの有用性、安全性を検討するために、われわれはJACREを実施した。JACRE-Rでは、イグザレルトの投与方法などは主治医の判断に任されていたことから、日本のアブレーション周術期のリアルワールド(実臨床)を反映したデータとも言えるだろう。加えて十分な症例数をもってイグザレルトが有効かつ安全に使用できることが明らかになった意義は大きく、周術期管理がより簡便に行える点でも、今後さらに普及していくものと考える。

L.JP.MKT.XA.11.2017.1645