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新ガイドラインの改訂ポイントと抗不整脈薬の選択-1

新ガイドラインの改訂ポイントと抗不整脈薬の選択


杉  薫 先生 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科

はじめに
  2008年11月、日本循環器学会は「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)」1)を発表し、翌2009年11月には「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」2)を発表した。不整脈薬物治療に関するガイドラインの心房細動に関する部分は心房細動治療(薬物)ガイドラインの改訂内容を反映させている。両ガイドラインの改訂ポイントに基づき、心房細動の薬物治療について述べる。
  睡眠不足やストレスなどによる一過性のものを別にすると、心房細動は、①発作が7日以内に自然に停止するが、再発を繰り返す「発作性」、②発作が7日を超えても自然には停止しないが、薬物によるかまたは電気的に除細動可能な「持続性」、③自然に停止せず除細動も不可能な「永続性」に分類される1、3)
洞調律維持治療の評価
  心房細動に対しては、脳梗塞を予防するための抗血栓療法が重要であるが、それと並行して行うべき治療として、心房細動そのものを抑制する洞調律維持治療と、心房細動のままで心拍数を正常範囲に抑制する心拍数調節治療と、どちらが優れているかが議論の的であった。数年前に欧米で行われた大規模臨床試験4~7)の結果では、両治療法の有効性に大きな差はなかったことから、副作用の比較的少ない心拍数調節治療がより有用であるとの認識が広まった。
  しかし、これらの臨床試験では発作性心房細動と持続性/永続性心房細動が区別されていなかった。そこで、わが国で800例を超える心房細動患者を対象にJ-RHYTHM(Japanese Rhythm Management Trial for Atrial Fibrillation)試験8)が実施された。その結果、発作性心房細動においては洞調律維持治療群でイベント回避生存率が有意に高く、特に服薬継続困難のため薬剤を変更した症例の頻度が低かった。すなわち発作性心房細動に対しては、QOL重視の観点から洞調律維持治療がより優れていることが示された。
  なお、Komatsuら9)はこれより先に、心房細動患者に抗不整脈薬を投与して5年間観察し、発作の再発を繰り返した群と発作が持続した群に比べて、洞調律を維持できた群では心原性脳塞栓症による死亡率がきわめて低いと報告している。
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