疾患関連情報

◆ 特別企画

新規経口抗凝固薬(NOAC)の時代を展望する

奥村 謙 先生
弘前大学大学院医学研究科
循環呼吸腎臓内科学 教授
内山 真一郎 先生
東京女子医科大学医学部
神経内科学講座 主任教授
棚橋 紀夫 先生
埼玉医科大学国際医療センター副院長・神経内科 教授
是恒 之宏 先生
国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター長

2011年3月以降、「非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制」を適応症とした新規経口抗凝固薬(noveloralanticoagulants:NOAC)が相次いで登場し、現在では3種類が選択可能になりました。それぞれの臨床試験の結果からワルファリンに代わり得る薬剤と期待されたNOACですが、最近、実臨床(リアルワールド)での課題も指摘されるようになってきました。またこの度、「イグザレルト錠特定使用成績調査(SPAF)の現状報告」が開示され、興味あるデータが出ています。そこで今回は、Clotman Press編集委員の先生方に、NOACを実際に使用した評価や印象、使い分けや今後の展望についてご討議いただきました。

1. 期待通りのNOAC


奥村 従来、心房細動に伴う脳梗塞(心原性脳塞栓症)の発症予防に抗凝固薬ワルファリンが使用されてきました。特に2000年以降は、エビデンスやガイドラインに後押しされ、ワルファリンの処方率は高まってきました。実際、主に循環器専門医が勤務する施設が参加した心房細動の登録研究J-RHYTHM Registryでは、心房細動患者の9割近くにワルファリンが使用されています。
    一方、プライマリケア医を含めた登録研究Fushimi AF Registryでは、ワルファリンの処方率は全体の50%程度と報告されています。実臨床(リアルワールド)では、やはり出血性合併症、特に頭蓋内出血が危惧されることやPT-INRのコントロールが容易ではないこと、服薬アドヒアランスや食事制限など長期管理における難しさ等が影響し、十分に普及していないと考えられます。
    このような状況下、新規経口抗凝固薬(Novel oral anticoagulant:NOAC)が相次いで登場しました。
 本日は、NOACが登場した時の期待や、実際に使用した印象などについて、それぞれご専門のお立場からお話しください。
是恒 NOACは、食事制限が要らないこと、薬剤の相互作用が少ないこと、頭蓋内出血のリスクが低いということで、発売当初より大きな期待を寄せていました。また、効果の発現・消失が早く、いわゆるオンオフがはっきりしているため、特に周術期の管理が容易で、実際に使ってみて期待通りの薬剤という印象です。
奥村 二次予防という観点で、内山先生や棚橋先生はいかがでしょうか。
内山 脳梗塞または一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)の既往がある心房細動患者さんは、それだけでCHADS2スコアが2点なので、他のリスクがなくてもワルファリンを投与しなければならないとされています。しかし、脳卒中データバンク2009によると、急性虚血性脳卒中で入院した患者さんのうち、脳梗塞やTIAの既往がある非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fobrillation:NVAF)の患者さんに対して、ワルファリンは4割ぐらいにしか使われていないという実態があります。つまり二次予防において、NVAF患者さんの約6割は抗凝固薬が投与されず再発を起こしてしまうという現状があります。それは是恒先生が指摘されたワルファリンのunmet medical needs(未だ満たされていない医療ニーズ)があり、そのためにunder use(十分に使われていない)になっていると考えています。それを解消する薬剤としてNOACが登場しました。NOACの登場によって、ワルファリンが使えなかった患者さんにも抗凝固療法を行える時代を迎えたという意味で、大きなパラダイムシフトを実感しています。
棚橋 NOACが登場する前ですが、脳卒中データバンクによると、脳梗塞を起こした患者さんで、NVAFがあり発症前にワルファリンの適応がありながら実際に投与されていたのは13%にすぎませんでした。そこにNOACが登場し、ワルファリンが投与できなかったケースにも抗凝固療法が可能になり、最近では3種類のNOACが販売され、より投与しやすい剤型も出てきました。
    われわれの施設では、腎機能を評価し禁忌に該当しなければ、まずNOACを選択するという方針になっています。また、NOACは効果発現が早いため、入院期間を短縮できるというメリットがあるので、患者さんにとっても恩恵があります。そういう意味で、新しい時代になったという印象です。

2. リアルワールドの抗凝固療法


奥村 NOACが登場してから2年半が経過し、プライマリケア医の先生方にも広く使用されていると思います。そこで今後はリアルワールドでの展開が重要になってきます。
    NOACはそれぞれ、RE-LY試験(ダビガトラン)1)、ROCKET AF試験(リバーロキサバン)2)、ARISTOTLE試験(アピキサバン)3)といった大規模臨床試験でワルファリンと同等またはそれ以上に有効であることが示され、安全性に関しては、頭蓋内出血が少ないという結果が示されました。特にJ-ROCKET AF試験4)は、日本人向け用量のリバーロキサバンの安全性・有効性を示した、わが国独自のエビデンスとして意義があると思います。これらのエビデンスの結果と照らし合わせて、NOACのリアルワールドでの評価はいかがでしょうか。
是恒 頭蓋内出血が少ないことは確かに実感しています。今のところ、われわれの施設で、NOACを使っている患者さんが頭蓋内出血で入院したという経験はありません。エビデンスで示された頭蓋内出血が少ないというメリットは、リアルワールドでも実感しています。
     それぞれのNOACの臨床試験では組み入れ患者のCHADS2スコアは異なりますが、われわれの施設でNOACを服用している患者さんの背景を見てみると、CHADS2スコアに関係なくNOACを使用しています。リバーロキサバンは、臨床試験の対象患者はCHADS2スコアが2点以上ですが、実際にはCHADS2スコアが1点の患者さんにも使っています。
     事実、わが国における抗凝固薬の処方率は、CHADS2スコアが低くても高くてもあまり変わらないことは指摘されていますし、国際的なAF患者を対象にした登録研究であるGARFIELD Registry(Global Anticoagulant Registry in the FIELD Registry) 5)でも、抗凝固薬の処方率はCHADS2スコア0~6点まであまりメリハリがないことが報告されています(図1)。実際にはあまりCHADS2スコアを意識せずに、リスクがあれば抗凝固薬を使っている、これがリアルワールドなのかなと思います。
奥村 NOACを二次予防で使用した際の印象はいかがでしょうか。
内山 当院においても、今のところNOACが投与された患者さんで出血性あるいは虚血性脳卒中は経験していません。しかし、一施設の印象ではなく全体のポピュレーションを反映した集団での発現率、転帰や処置についてのデータの蓄積は非常に重要です。
 また、頭蓋内出血を起こしてしまった場合でも、NOAC投与患者では出血の増悪が少ないことを指摘する施設もあります。これは効果の消失が速いということに関連していると考えられます。一方、消化管出血は当院でも何例か経験していますが、HAS-BLEDスコアが3点以上の患者さんにおいて多くみられています。NOAC投与患者でも、やはりHAS-BLEDは出血リスクの評価には有用ですし、CHA2DS2-VAScと合わせてベネフィットとリスクをきめ細かく評価することが日常診療でも必要だと感じています。 棚橋 われわれの施設では、二次予防で使用可能な患者さんにはNOACを使用しています。その中で頭蓋内出血の症例は1例で、埼玉県の他施設の先生に聞きましても、もともと例数が少ないということもありますが、ほぼ臨床試験のデータの範囲内であるという印象を私は持っています。ワルファリンに比べて頭蓋内出血が少ないという臨床試験で示されたNOACの特徴は、リアルワールドでも感じています。
     では反対に、NOACを服用している患者さんが脳梗塞を起こさないかというと、必ずしもそうではなく、ワルファリンと同様に休薬で発症することがあり、やはり休薬や中止に対しては注意しなければなりません。
奥村 いずれの先生方も、NOACでは、出血性合併症、特に頭蓋内出血が少ないという印象をお持ちとのことでした。ただ、頭蓋内出血が少ないとはいえ、症例によっては、内山先生もおっしゃいましたように、発症時よりも24時間以内に血腫量が増大して不幸な転帰をとる場合があります。NOACは効果の消失が速やかで、理論的にはそのリスクも小さい可能性があります。より簡便で頭蓋内出血のリスクが低い抗凝固薬を得たという意味では、新しい時代になったと思います。

3. リアルワールドにおける心房細動の実態

奥村 わが国のリアルワールドにおける心房細動患者の実態を明らかにするために、いくつかの登録研究が実施されています。主に循環器専門医によるJ-RHYTHM Registry6)では、半分の患者さんがCHADS2スコア0~1点で、全体の9割近くの患者さんにワルファリン
が処方されています。一方、病院の専門医だけでなくプライマリケア医の先生方も参加しているFushimi AF registry(伏見心房細動患者登録研究)7)では、CHADS2スコア0~1点の患者さんは全体の37%で、ワルファリンの処方率は50%に満たない状況です。また、国際的な登録研究であるGARFIELD Registryも進行中で、中間データが報告されていますが、それぞれ患者プロフィールやワルファリン療法の実態に違いがみられています(表1)。今後、これらの登録研究によって、リアルワールドにおける抗凝固療法のアウトカムが明らかにされるでしょう。
   ところで、リアルワールドの心房細動治療の実態は、NOACの臨床試験と異なる点があります。最近、「イグザレルト錠 特定使用成績調査(SPAF)の現状報告」が開示され、実際にはCHADS2スコアが0~1点、2点、3点以上の患者さんに偏りなく使用されていることがわかりました(図2)。
   つまり、リバーロキサバンは、J-ROCKET AF試験ではCHADS2スコア2点以上の患者さんが対象となっていましたが、リアルワールドでは低リスクの患者さんにも投与されています。恐らく他のNOACも実際には低~高リスクの患者さんに幅広く処方されていると思いますが、高リスク例に対しては当然として、低リスクの患者さんに対してNOACをどのように使っていくべきでしょうか。
是恒 以前から、ネットクリニカルベネフィット(Net clinical benefit:予防医療のメリット;リスクを考慮した上での総合的な有用性)という概念があって、ワルファリンではCHADS2スコア0~1点で、頭蓋内出血と脳梗塞の予防効果のバランスを考えた場合、メリットが明らかではありません。しかし、NOACでは、脳梗塞予防効果はワルファリンとほぼ同等またはそれ以上で、頭蓋内出血は明らかに少ないですから、よりリスクの低い患者さんにもメリットがあると思います。ただ、65~74歳の年齢層に関しては十分なエビデンスがありませんので、実際に使われているデータを前向きに観察して示していく必要があります。
   実際の診療で、NOACで最も気をつけなければいけないのは腎機能です。NOACが出るまでは、クレアチニンは見てもクレアチニンクリアランス(CLCr)を計算することはあまりありませんでした。高齢で低体重の患者さんでは、CLCrが思うよりも低いことが徐々にわかってきたのではないでしょうか。
   そして、もう1つNOACについて気をつけるべきことは、服薬アドヒアランスの問題で、薬がきっちり飲めているかどうかということもすごく大事なポイントです。ワルファリンに比べて飲み忘れるとすぐ効果が落ちてしまいますから、その分、脳梗塞のリスクに十分注意をしたいところです。

4. リバーロキサバンの市販後調査

奥村 この度、「リバーロキサバンのPMS現状報告」(以下、PMS)がまとまりました。このような市販後の調査では、臨床試験では得られなかった新たな知見や課題が明らかになります。このデータを今後どのように活かしていくべきでしょうか。
内山 興味のあるデータがいろいろ含まれ、大変参考になると思います。まず、患者背景ですが、J-ROCKET AFではCHADS2スコアが0~1点の患者さんは対象ではなかったのですが、PMSでは1/3の患者さんはCHADS2スコアが0~1点でした。今後、安全性や有効性についてデータが集積される予定ですが、CHADS2スコア0~1点と2点以上の患者さんで、リバーロキサバンの有用性に違いがあるのかどうか興味があります。
   ただし、今回のPMSはあくまでも約1,000例の途中の集計結果であり、安全性や有効性について評価できません。しかし、頭蓋内出血が4例(出血性卒中、視床出血、出血性梗塞、硬膜下血腫)で、そのうち硬膜下血腫が1例、虚血性脳卒中が3例(心原性、非心原性、病型不明)というのは、J-ROCKET AFで示された結果の範囲内であったのではないかという印象です。それから、CLCrを計算せずに投与されている患者さんが10%以上存在するのは安全性・有効性確保の観点から重大です(図3)。CLCrを必ず計算して投与するように肝に銘じて注意を再喚起する必要があると思います。
   リアルワールドでの評価については、PMSに加え、現在、リバーロキサバンの前向き登録研究であるEXPAND study(Evaluation of effectiveness and safety of Xa inhibitor for the Prevention of stroke And systemic embolism in a Nationwide cohort of Japanese patients Diagnosed as non-valvular atrial fibrillation:リバーロキサバンの医師主導多施設共同登録研究)が行われていますので、それも合わせて参考にしたいと思います。
奥村 そうですね、CLCrのデータがないのは体重が測定されていないためですが、CLCrの測定は安全性の観点から周知徹底していくということが求められます。棚橋先生はこのPMSをどのように活用したらよいと思われますか。
棚橋 PMSとしては興味深いデータかと思います。特に、注目するのは、中間集計ではありますが、CHADS2スコア0~1点、2点、3点以上がそれぞれ1/3ずつ偏りなく使用されていることです。当院の地域では0~1点の患者さんに対してこんなに使っていないという印象があります。やはり、NOACの使用実態については、地域差や先生方の認識の差も影響すると思います。
   問題点として、CLCrが50mL/min以上で本来15mgを投与しなければならない患者さんに対して、10mgを投与している例が結構ありますね(図3)。高齢や低体重などの要素を考慮して投与量を下げていると考えられます。「イグザレルト錠 適正使用ガイド第3版」では、75歳以上と50kg未満という2つの要素が重なれば、CLCrが50mL/min以上でも10mgの選択を考慮すると記載していますが、実際には片方だけでも当てはまれば、低用量を選択しているのかもしれません。しかし、その場合、有効性が本当に担保できるのかという問題が出てきます。もちろん出血は気になりますが、出血リスクをきっちり評価して、投与量は適正使用ガイドのExpert Opinionを参考に選択してよいと考えます。
奥村 非常に重要な点をご指摘いただきました。中等度以上の腎障害がなければ投与量15mgが求められるわけですが、ワルファリンと同様の感覚で弱めにコントロールしようとして10 mgを選択した結果、NOAC本来の効果が発揮できない可能性が出てくると思います。PMSのデータを見ながら、安全性だけでなく有効性についても、きちんと追求していかなければならないと思います。

5. 高齢者に対する抗凝固療法

奥村 今後わが国は高齢化が進み、心房細動患者数が増加することが予測されることから、心原性脳塞栓症リスクの患者さんが増加することが危惧されます。そこで、高齢者に対する抗凝固療法がポイントになってきますが、抗凝固療法の普及にはどういうことが必要になるでしょうか。
是恒 J-RHYTHM Registryではほぼ9割の患者さんにワルファリンが使われていますが、それに比べてFushimi AF registryでは半分以下でした(表1)。これは、1つは年齢の問題、もう1つはプライマリケア医/一般内科または病院/専門医のどちらを中心としたデータかということが理由として考えられます。超高齢社会を迎えたときに、病院で診られる患者数は限りがありますので、プライマリケア医や一般内科の先生方にいかにうまく抗凝固療法を行っていただけるかが重要になってくると思います。
   これまで、85歳までの年齢層は試験に組み込まれていましたが、85歳超のデータはほとんどありません。講演でワルファリンを推奨していますが、85歳超ではワルファリンは4割ぐらいしか使われていないという現状があります8)。超高齢社会を迎えて、85歳超の年齢層をどう予防していくのかというのは重要な課題です。今後、低用量での有効性も含め、データを創出していかなければならないと思います。
奥村 わが国の人口の推移を見ると、2010年の時点で85歳以上が約400万人です。今後はさらに高齢化が進み、しばらくは超高齢社会が続くでしょうから、85歳超の患者さんの抗凝固療法をどうするかということは極めて重要な問題です。また、高齢者では脳梗塞の既往がある患者さんも多いと思います。
    そこでNOACを超高齢者を含めた高齢者にどのように適用するかということですが、どのようにお考えでしょうか。
内山 それは悩ましい問題で、CHADS2スコアあるいはCHA2DS2-VAScスコアとHAS-BLEDスコアは並行して上がっていきます。つまり、脳卒中リスクの高い患者さんは頭蓋内出血をはじめとする重篤な出血性合併症のリスクも高いというジレンマがありますから、1人ひとりのリスク・ベネフィットをきめ細かく評価し、NOACを適正に使用することが非常に重要になってくると思います。
    それと、健康寿命を保っている超高齢の患者さんが、超高齢を理由にNOACの恩恵を受けられないのは年齢差別にもつながります。最大限にNOACの特性を活かして脳梗塞の予防をすることで、1人でも多くの高齢者の健康寿命を延ばすことができます。脳梗塞で倒れてしまうと、それ以降莫大な医療費がかかってしまいますので、国民医療の観点からもNOACの正しい使用が必要になってくると思います。
棚橋 二次予防の立場からみると、心房細動があって脳塞栓症を起こされる方のほとんどが75歳以上で、85歳超の方もいらっしゃいます。そういう方の場合、一次予防に比べて抗凝固療法での出血リスクも非常に高いわけです。しかも日本人は、ワルファリンによる頭蓋内出血のリスクが白人よりも高いということはすでに示されていますので、やはりNOACが使える患者さんに対してはNOACを優先して使っています。
    ただ、抗凝固療法が十分に行われていないのは、年齢が一番影響していると思います。是恒先生がおっしゃったように、85歳前後までしかデータがありませんから、これからは新しいデータを構築して高齢者におけるメリットを示していかないとなりません。ただ現実は、認知症や服薬管理等の問題があって、使用しにくい環境にあることも事実です。それがこれから大きな課題になってくると思います。
奥村 臨床試験に85歳超の患者さんがエントリーされるのは非常に少ないため、NOACもワルファリンもエビデンスがあまりないということですね。高齢者ではワルファリンをPT-INR2.0以下と弱めにコントロールすることがありますが、それもエビデンスがありません。今後は、高齢者にNOACをどう適用させていくかというのが大きな課題です。

6. 抗凝固薬の選択とNOACの使い分け

奥村 現在、抗凝固療法においてワルファリンおよび3種類のNOACが選択可能な時代となりました。今後はNOACが第一選択として使用されると思いますが、これらをどのように使い分けるかが課題になると考えます。NOACの中での選択基準や注意点、期待等につきましてお話しください。
是恒 新規の症例に関しては、脳梗塞のリスクがあって腎機能が比較的良ければ、NOACを第一選択とするのは異論のないところだと思います。一番の課題としては、現在ワルファリンを使用している患者さんの切り替えです。リアルワールドではワルファリンの使用はそれほど減っていないので、現時点では、切り替えは積極的に行われていないと推察します。日本人は白人に比べてワルファリンで頭蓋内出血が多いことは以前から報告されています。これはNOACの臨床試験のサブ解析でも明らかになっています。プライマリケア医や一般内科の先生方に、ワルファリンで頭蓋内出血が多いということとNOACに切り替えるメリットを認識してもらう必要があると思います。ただ、コストの問題があり、もう少し使いやすい値段になれば、さらに広まっていく可能性は高いと思います。
   腎機能については、リバーロキサバンはCLCr 15~30mL/minで使えることになっていますが、エビデンスが乏しいのでCLCr 30mL/min以上で使うように考えます。J-ROCKET AFでは、リバーロキサバンは、75歳以上あるいは低体重の患者さんで、ワルファリンと比べて出血が少し多いというデータもありますので、PMSなどのリアルワールドでのデータをきちんと集めていかなくてはなりません。臨床試験では症例数が限られていますので、より多くの症例で安全性についてのデータが待たれるところだと思います。
    また、通常、服薬回数で1日2回よりは1日1回のほうが服薬アドヒアランスが高いので、1日2回でどうしても夜の飲み忘れが多いという患者さんには、より積極的に1日1回の薬を使うという使い分けになっていくだろうと思います。
奥村 NOACの中でも、投与回数は使い分けのポイントの1つになると思います。感覚的に、1日2回投与は有効性が高そうで、逆に出血性合併症が起きやすいような懸念がありますし、1日1回投与では安全性は高いが効果が不安というような印象があります。臨床試験では両方とも同じような効果が出ていますので、それぞれの用法・用量を信用して投与するということだと思います。
内山 NOACの特性や臨床試験の結果に関しては、共通している点が多く、お互いに非常に似ていると言えます。ですから、実際には剤形の飲みやすさ等、服薬回数が患者さんにとっては大きな選択基準になると思います。患者さんを対象にしたアンケート調査では、カプセルよりも錠剤、なるべく小さく、1日2回よりも1日1回がいいという結果が出ています9)。
    臨床試験は、よく管理され守られた環境下で薬が投与されますが、リアルワールドでは臨床試験ではみられなかったいろいろな状況や患者さんに使われることになります。それで、いずれのNOACも、最初はストライクゾーンの患者さんから使い始めて使用経験やエビデンスを集積していくと言っていたと思います。しかし、このように臨床経験やエビデンスが集積してくると、今後はもう少しストライクゾーンを広げて適正に使用していくことで、NOACの恩恵を受ける患者さんが増えると思います。
棚橋 NOAC同士の差についてはいろいろ議論があって、AHAのガイドラインでは推奨度に差をつけた表現になっていますが、ESCでは推奨に差をつけていません。いずれのNOACもそれぞれの臨床試験で、用量調節したワルファリンと比べて、脳卒中の予防効果については非劣性が検証され、頭蓋内出血の頻度は少なく、消化管出血は減らしていません。そういうことを理解した上で、リアルワールドでのNOACの使い分けを考えると、利便性が前面に出てくると思います。NOACの有効性・安全性は示されていますので、あとは投与回数、剤形、消化管障害への対策等が影響してくると思います。
    それと、NOACの使用に際しては、腎機能と高齢者に特に注意が必要ですが、ある先生がおっしゃったように「NOACというのは使いながら学べ」ということが重要と思います。
奥村 本日はNOACを中心にお話しいただきましたが、実はワルファリンも脳梗塞の予防効果という点では優れた薬剤です。問題はやはり頭蓋内出血ですが、これをある程度克服できたという点において、NOACはより進化した抗凝固薬と思います。
    あとは先生方がおっしゃるように、それをいかに普及させるかということです。適正使用についても、大いに啓発していかなければなりません。
    今後は、NOACが抗凝固療法の第一選択薬として使用されるようになるでしょう。NOACが安全かつ適正に長期間投与され、心原性脳塞栓症の患者さんが一人でも少なくなるように、ひいては健康寿命を延ばすことが、超高齢社会を迎えるわが国の究極の目標ではないかと思っています。本日は貴重なご意見をいただきありがとうございました。


■References

  • 1)Connolly SJ, et al., RE-LY Steering Committee and Investigators. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151.
  • 2)Patel MR, et al., the ROCKET AF Investigators. N Engl J Med 2011; 365: 883-891.
  • 3)Granger CB, et al., ARISTOTLE Committees and Investigators. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.
  • 4)Hori M, et al., on behalf of the J-ROCKET AF study investigators. Circ J 2012; 76: 2104-2111.
  • 5)Kakkar AK, et al., PLOS ONE 2013; 8(5): e63479 doi: 10.1371/ journal. pone. 0063479. Print 2013.
  • 6)Inoue H, et al., J-RHYTHM Registry Investigators. Circ J 2013; 77(9): 2264-2270.
  • 7)Akao M, et al., Fushimi AF Registry Investigators. J Cardiol. 2013; 61(4): 260-266.
  • 8)Furusho H, et al., Circ J 2008; 72(12): 2058–2061.
  • 9)健康日本21推進フォーラム, 脳梗塞発症リスクの高い心房細動の患者さんの コンプライアンス(服薬遵守)
         の実態に関する調査, 2013.